OSO18が遂に駆除される。これまでなぜ捕まらなかったのか

OSO18が遂に駆除される。これまでなぜ捕まらなかったのか

北海道の標茶町・厚岸町でこれまで家畜の牛66頭を襲い、町の人達を震え上がらせていた「OSO18」というコードネームがつけられたヒグマが遂に駆除されていることがわかりました。

OSO18の名前の由来は、最初の被害現場が「オソツベツ」という場所、足跡のサイズが18cmということから、これらを組み合わせてOSO18となりました。

牛の被害はこれまでに2019年から続いており、常にOSO18の動向を追い続け駆除を試みてきましたがOSO18の警戒心が強く一向に進展しないまま4年が経過していました。なぜこれまでOSO18を捕まえられなかったのか、多くの現場の情報が出ていますが、今回はたまたま猟友会によって駆除された熊のDNA鑑定をしてところ、これまで牛を襲ってきたOSO18のDNAと一致したことからOSO18の駆除が判明したという顛末となりました。

OSO18が捕まらなかった理由

これまで人が住むエリアの牛を襲うという熊としてはあまり例のない行動をしてきたことで有名になったOSO18ですが、足跡などを追いながら普通ならすぐに駆除されてもおかしくありませんでした。

行動範囲が広く、追われないルートを使うOSO18

しかし4年間ずっとOSO18を追い続けてもかすりもせず、監視カメラの映像や足跡などから人間の行動を把握しているとしてもおかしくないほど同じルートを歩かないなど警戒心が高いことがわかってきました。

追われないように沢を移動したり、一定の狭いエリアにとどまらず広いエリアを移動したり、居場所を突き止めることが困難な状況をOSO18が作り出していることがわかっています。要するに熊が森の中で生活しているだけでなく、明らかに人間という脅威を意識して生きているということがわかるのです。

罠にも一切反応しないOSO18の警戒心の強さ

これまで多くの罠(色々な変化をつけて試した)には一切反応せず、高度な学習能力があると考えられていました。檻という森の中ではあり得ない人工物ですから、そのサイズをより大きくして4mサイズにしたとしても、そこに入ることはなく、捕獲することはまず無理だという空気感さえあったようです。

これまでのOSO18の行動から考えて野生のただの熊とは思えない、人間のことを理解しているのではないかと思わざるを得ない4年間が続きました。

ここまで来るとただの野生のヒグマではなく、何か神がかり的なものを感じるのですが、2023年7月30日にOSO18が駆除されていたことがわかりました。

OSO18が釧路町でハンターに駆除された

2023年7月に釧路町で一頭のヒグマが駆除されました。後日そのDNAを調べてみると、このヒグマのDNAがこれまで牛の被害現場で採取されたDNAと一致し、OSO18が駆除されたことが明らかになりました。

ハンターはOSO18とは知らずに駆除したとのことです。

というのもOSO18はわずかに映像が残っているものほとんど姿を見せず、他のヒグマとの判別がまずつかないという幻のヒグマでした。

そのためハンターがヒグマを発見したときもOSO18か他のヒグマかどうかは判別がつかないのは当然で、今回は偶然OSO18を発見し駆除に至ったということです。

一旦の牛の被害は食い止められた

今回のOSO18駆除によって、これまで66頭、総額2000万円以上の被害が出ていたOSO18による牛を襲う事件はこれで一旦食い止められたと言えます。

しかしここ30年でヒグマは倍に増えていて、理由は環境の保護、生態系の保護のため。これまで続いていた冬眠明けの「春の一斉駆除」をやめたことが減ったヒグマを増やすことに繋がりこれは成功したわけですが、一方でヒグマが森から人の住むエリアまで出てくることが多発する原因にもなってしまいました。

OSO18という個体は駆除されましたが、ヒグマが増えている現状を考えると家畜だけでなく人への直接被害を継続的に防いでいくことが重要であることは間違いありません。

人と自然動物との境界線の難しさ

獣害が出るたびに論争が起こる、人と自然の共存問題。人が生活するための経済活動が被害を受けたり人の命そのものに害がある場合もあり、野生動物と人の生活圏のボーダーがなくなりつつあることはそこに住んでいる人たちにとって大きな問題です。

例えば野生動物が多い森から一定距離離れた場所でしか住めにないように人間の生活圏を制限したとしても、一度農作物や家畜、人間のゴミを覚えてしまうと山から降りてきて生活圏を広げるだけでしょう。

野生動物は悪さをしてやろという意識ではなくただ食料を求めてやっているだけなので、人間の生活圏かどうかは関係なくまた境界線を理解することは不可能です。今後できる対策はやはり駆除でしかないと考えられます。